この習主席の発言の真意は、極めて複雑な状況が背景にあるのは間違いないが、その主な意図は、国内の習主席に対する政治姿勢にある種の不満を抱く者たちに対する封じ込めの意味が、その第一であろうと思う。つまり、「南シナ海は、中国の領海だ」とする、中国の国是である「覇権主義の遂行」を確認することで、習近平に不満を抱く者たちの意義を制した形と採ったのだと考えられる。
しかし、この習近平の発言は、外交としては問題発言であると言えるだろう。ことがどんな内容であれ、会談相手の大統領に対して「戦争」を口にする異常さは、逆に習近平の内面心理の動揺、つまり、「自分の意図する通りにはなっていない」という不満の表象とも、観てとれる。
北朝鮮問題で米国のトランプ大統領から「北朝鮮への圧力を強める」ことを求められたが、その政策が思い通りには進展しておらず、「血の同盟」と言われていた北朝鮮との関係だが、北朝鮮からは逆に決別を意味する声明も出されている。
そもそも、習近平は北朝鮮の金正恩に対して良い印象を持っていないのは確かで、その証拠に就任以来、一度も北朝鮮を訪問していないのだ。
たとえ、これが国内向けの発言であったとしても、会談相手国の大統領に対して「戦争」を口にする習近平の異常さは、国際関係においては許されざることだと言える。
